Nova5 大森望編集 河出文庫
大森望編集(すみません、以下敬称略)のSF短編集の5冊目ですが、5冊目にして初めて全作品を違和感なく読み切ることができました。今回は読みやすい作品ばかりが収録されていたことが良かったです。収録作品も粒ぞろいで、今後のNOVAシリーズにも期待してしまいます。
「ナイト・ブルーの記録」上田早夕里
「魚船・獣船」でも有名な作者ですが、いつもの生物学哲学的な内容ではなく、海洋を舞台とした拡張感覚がテーマとなっています。すごく説得力を感じました。熟練の職人に仕事の感覚を話させたらこんな感じになるのかもしれません。おすすめの一編です。
「愛は、こぼれるqの音色」図子慧
これも、脳神経と感覚にまつわるお話ですが、趣はだいぶ異なります。脳神経に直接外部から感覚をインプットできるようになったら、当然こういう商売が出てくるだろうなと言う点ではすごく説得力があります。作者はライトノベル系の出身だそうですが、とてもそうは思えない思い作品です。
「凍て蝶」須賀しのぶ
これは、ホラーというとちょっと違う気がしますが、不思議な話として読める幻想譚と言えるでしょう。この作者もコバルト文庫などで活躍するライトノベル系の作家だそうですが、この作品はもっと一般的な読者を対象としているように思います。登場人物、特にヨールが魅力的です。異形シリーズなどのファンにはおすすめの作品だと思います。
「三階に止まる」石持浅海
挙動不審なエレベーターの話。ある意味ホラーなんでしょうけど、あまり怖くないです。著者は元々ミステリー作家なのだそうで、展開はまさしくミステリーですが、オチはホラーというか、ファンタジーとでもいいましょうか。特に、最後の二行が良い味を出しているように思います。
「アサムラール」友成純一
笑ってはいけないのかもしれませんが、思わず笑ってしまう一編。バリ島でのんべんたらりと生活している日本人がとんだ災難に。作中の手記は大体実話とのこと。こんな日本人もいるんですねぇ。この人こそ、平成の無頼派作家と言えそうな気が。
「スペース金融道」宮内悠介
「盤上の夜」でデビューした著者の新作。趣向としては、「ナニワ金融道」の宇宙版といった感じですが、決してこのマンガのパロディではありません。これはこれで作品として成立しています。宇宙植民時代(しかも、公民権のあるアンドロイドまで登場している)の金融業者というアイディアは斬新で、いかがわしさがえらくリアルです。この短編集の中でも一押しの一編と思いました。
「火星のプリンセス 続」東浩紀
まだ未完なので、評価はひかえますが、次の展開を期待させられる一編となりました。ただ、「クリュセの魚」「火星のプリンセス」を読んでおかないとよくわからない話だとは思います。
「密使」伊坂幸太郎
「ゴールデンスランバー」等の本格ミステリーで有名な著者のSF中編。実は、著者の作品はこの作品で初めて読みました。一種の時間テーマのSFなのですが、アイディアと語り口がすばらしいと思いました。とても読みやすくて中編の長さを感じさせないのもよいと思いました。この短編集の中でのベストと思います。しかし、「密使」の正体があれとはねぇ。
解説によると、「NOVA6」は現在鋭意編集中とのこと。期待して良さそうです。また、「この人の作品が読みたい」とのリクエストも受け付けるとのことです。個人的には、有川浩、機本伸司、谷川流、恒川光太郎と言った所を提案させていただきます。
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