NOVA4 大森望編集 河出文庫
大森望氏編集の新作日本SF短編集の第4集です。今回はハードSFっぽさは少なめです。
今回は9編の作品が収録されています。
「最后の祖父」京極夏彦
京極氏の、構想自体はかなり前からあったという短編。あるおじいさんの話というのはよくわかったが、全体的に、どうも言いたいことがよくわかりませんでした。これがデビュー作になっていたら、京極夏彦のその後の作風はずいぶん変わったかもしれません。
「社員食堂の恐怖」北野勇作
以前、NOVAシリーズで同じ北野勇作氏の、似た舞台の話がありましたが、ホラー度という点ではこちらの方が上かもしれません。とはいえ、個人的にはちっとも怖くはなかったのですが。さて、これからどうなる、と言うところで終わってしまったようなところがあるような気がします。
「ドリフター」斉藤直子
今回の短編集の中では一押しと思われます。落語のネタを下敷きにしているとのことですが、そのせいもあってか、話の筋はしっかりしているように思います。40代後半の私にとっては、懐かしく読めたというのもまた事実だと思います。いわゆる官報って、企業の生き死にの話ばかりが載っているのではなかったのですねぇ。
「赤い森」森田季節
考古学SFと言っていいのでしょうか。私も(もちろん考古学ではありませんが、)研究者だったことがあるので、あり得ないところであり得ない発見をして愕然とするという研究者の気持ちはわかるつもりです。なかなかおもしろく読めました。私も、「この部分については今後の実験で明らかにしていく予定である云々。」と論文に書いて逃げを打ったことがあります。
「マッドサイエンティストへの手紙」森深紅
これも今回の短編集の中ではおすすめの一つ。作者がどの企業をモデルにして作品を書いているのかは(大体見当がつきますが、)わかりませんが、このようなセキュリティ体制をとる企業は実在しています。そのような企業なら、この小説の「ドクター」のような人がいても決してふしぎではありません。私は、この作品が今回の短編集の中で一番ハードなSFであると思っています。
「警視庁吸血犯罪捜査班」林譲治
吸血鬼が普通に存在する東京が舞台の警察ミステリ仕立てのSFです。いつもの林譲治節が楽しめます。個人的にも好みの作品です。いくつか突っ込めそうな部分もなくはないような気がしますけどね。
「瑠璃と紅玉の女王」竹本健治
竹本健治氏の作品は初めて読んだと思います。ある種おとぎ話のような雰囲気のある作品でした。結末はものすごく普通というか、予想できる内容でしたので、その点、もう少し驚きがある内容だったらもっと良かったのになぁと思っています。おとぎ話なのだから仕方が無いのかもしれません。
「宇宙以前」最果タヒ
すみません。この作品は最後まで読めませんでした。最果タヒ氏は詩作が本業とのことで、抽象的なイメージが優先されている前衛的な作風は当然なのかもしれません。
「バットランド」山田正紀
この本のレビューを書いている方々のほとんどはこの作品を一押しにしていらっしゃいますが、私にはこの作品の良さがよくわかりませんでした。言っていることがわからないと言うことはあまりなかったのですが、どうしてそうなるのとか、どうして最後にうまくいってしまうのかとかがいまいち納得できませんでした。この作品を良いとおっしゃっている方々はよくわかっていらっしゃるんでしょうけど。
続刊のNOVA5はほぼできていて、NOVA6も作業進行中とのこと。おもしろい短編集なので、是非長く続いて欲しいものだと思います。
「NOVA4」 大森望編集
河出文庫 お20-4
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