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2011年5月

2011年5月 4日 (水)

シンギュラリティ・コンクエスト 山口優著 徳間文庫

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 第11回日本SF新人賞受賞作、著者のデビュー作です。

 これはライトノベルなんでしょうか。著者は本格ハードSFを書こうかと思ったのだが、それでは読者層が限定されるので、急遽ライトノベルに書き換えた、そんな感じのする一編です。
 ここでは、二つのテーマが書かれています。一つは、人工知性が人間を凌駕するようになった(その瞬間をシンギュラリティと言うそうです)とき、その人工知性の暴走を抑えるためにはどのように管理すべきか。もう一つは、小説内の設定、「全天紫外可視光輻射現象」を克服するための手段の探索。どちらかというと、前者の比重が高い内容となっています。
 用語や内容はかなりハードなSFですが、語り口や主人公がティーンの女の子の姿をしたアンドロイドって所はライトノベルな感じです。また、人工知能のコードネームがMESIAH(メサイア)だのAMATERASU(アマテラス)だのとむりくり英語を当ててネーミングしている所なども、読みやすくしようと努力した跡なのかもしれません。ご苦労なことです。
 しかし、著者の経歴(東大で物理学の学位を取ったそうです)が邪魔するのか、ところどころラノベ読者にはようわからんだろうと思われる表現もあったように思います。

 しかし、作品としての完成度は十分高かったように思います。ストーリー展開も自然で、あまりひねりがない分、安心して読み進めることができたように思います。これがデビュー作というのですから、今後が楽しみであろうと思われます。特に、ストーリーの中核アイディアが、前出の経歴を持った著者で無ければ提出できないと思われるところに高いオリジナリティを感じました。いろいろSFをよんできた私ですが、シンギュラリティ問題をテーマにした作品は初めてのような気がします。ただ、その解決方法は、著者も後書きで述べているように、少々ナイーブというか、理想論的な面があることは否めないです。この部分で、もう少しはっとするような解決方法がひねり出せるとよかったように思います。また、今後新作を作っていく中で、このようなインパクトのある中核アイディアを出し続けることができるかどうか、それが勝負になっていくでしょう。一発屋にならないことを祈りたいです。

 楽しく読めるおもしろいSFです。ハードSFファンでも十分読める無いようだと思います。

 映像化は難しいんじゃないかなぁ。特に、みんなが納得する天夢の造形は困難なんじゃないかと。

 すみません。相変わらず偉そうなことを言っています。

「シンギュラリティ・コンクエスト 女神の誓約」
山口優著 徳間文庫 や32-1

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