ゼロ年代日本SFベスト集成(F) 逃げゆく物語の話 大森望編 創元SF文庫

大森望氏編集による、「00年代(西暦2000年~2009年)の10年間に国内で発表されたSF短編から、歴史に残る作品をよりすぐった傑作選」です。この(F)の巻には、「現代を舞台にした”すこし・ふしぎ”系の物語を軸に」12編が収録されています。それだけに、ハード系よりもややファンタジー系・奇想系の作品が多いように思いますが、比較的読みやすい作品が多く、すんなり読めました。この一冊で「現代SFの豊かな広がりと多様性を示す」というのはその通りで、こんなにいろいろな構想のSFが成り立つのかと、日本SFの将来を期待させるものはあったように思います。収録されているのは次の12編。
「夕飯は七時」恩田陸は、すこし・ふしぎ系だと言えば全くその通りですが、ちょっと不思議すぎたような気がします。
「彼女の痕跡展」三崎亜記は、主人公が出会う不思議な展示会の話。確かに、自分の記憶に関してこんな印象を持った覚えがあるような気がします。ちょっと考えさせられました。
「陽だまりの詩」乙一は、ポスト人類をテーマにした短編。雰囲気は良かったです。おすすめの一つです。
「ある日、爆弾が落ちてきて」古橋秀之は、ある意味学園もののライトノベル。読みやすかったです。
「光の王」森岡浩之については、ロジャー・ゼラズニィの作品とは無関係な内容だけど、なかなか興味深い設定の短編。あなたは先週の水曜日に何をしていましたか?
「闇が落ちる前に、もう一度」山本弘は、宇宙論SF。山本弘氏の小説にしては、あまりスタイリッシュな面が少ないような気がしますが、ハードSFに分類してよいと思いました。
「マルドゥック・スクランブル"-200"」冲方丁は、ミステリー仕立てのSF。マルドゥック・スクランブルファンならずともおすすめの短編です。
「冬至草」石黒達昌は、硬質な文体の、生物学系ハードSF。個人的には、この本の中で一番のお気に入り。石黒達昌氏については、芥川賞候補になった作品を書いたこともある作家だそうですが、全然知らない作家でした。しかし、「鼻行類」が好きな私にとってこういう文体は大好きです。非常におもしろく読めました。
「延長コード」津原泰水は、SFという感じがしない作品。実は、あまり理解できませんでした。
「第二箱船荘の悲劇」北野勇作は、北野勇作氏らしい、簡潔な文章ながらはちゃめちゃな内容の作品。とはいえ、あまり好みの作品ではありませんでした。
「予め決定されている明日」小林泰三は、仮想世界ものと言ってよいのかもしれませんが、よくわからない作品でした。小林泰三氏と言えば、ホラー小説というイメージがあるのですが。
「逃げゆく物語の話」牧野修は、物語を物語る、いわゆるメタテキストな小説と言えるのでしょうか。ちょっと違うような気もしますが。ちょっと文学的すぎて、私には難しい小説でした。
総じて、「ぼくの、マシン」よりも、日本SFらしさが前面に出ている作品群だったように思います。日本SFの短編アンソロジーとしてよくできています。ただ、確かに傑作揃いだと思いますが、いくつか、00年代の代表作とするには首をかしげたくなる作品も含まれているのも確かだと思います。
なお、巻末の「ゼロ年代日本SF概況」は、非常に参考になる資料でした。一読の価値があると思います。
ゼロ年代日本SFベスト集成(F) 逃げゆく物語の話 大森望編 創元SF文庫
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