« 2010年12月 | トップページ | 2011年3月 »

2011年2月

2011年2月13日 (日)

ゼロ年代日本SFベスト集成(F) 逃げゆく物語の話 大森望編 創元SF文庫

Photo
 大森望氏編集による、「00年代(西暦2000年~2009年)の10年間に国内で発表されたSF短編から、歴史に残る作品をよりすぐった傑作選」です。この(F)の巻には、「現代を舞台にした”すこし・ふしぎ”系の物語を軸に」12編が収録されています。それだけに、ハード系よりもややファンタジー系・奇想系の作品が多いように思いますが、比較的読みやすい作品が多く、すんなり読めました。この一冊で「現代SFの豊かな広がりと多様性を示す」というのはその通りで、こんなにいろいろな構想のSFが成り立つのかと、日本SFの将来を期待させるものはあったように思います。収録されているのは次の12編。
 「夕飯は七時」恩田陸は、すこし・ふしぎ系だと言えば全くその通りですが、ちょっと不思議すぎたような気がします。
 「彼女の痕跡展」三崎亜記は、主人公が出会う不思議な展示会の話。確かに、自分の記憶に関してこんな印象を持った覚えがあるような気がします。ちょっと考えさせられました。
 「陽だまりの詩」乙一は、ポスト人類をテーマにした短編。雰囲気は良かったです。おすすめの一つです。
 「ある日、爆弾が落ちてきて」古橋秀之は、ある意味学園もののライトノベル。読みやすかったです。
 「光の王」森岡浩之については、ロジャー・ゼラズニィの作品とは無関係な内容だけど、なかなか興味深い設定の短編。あなたは先週の水曜日に何をしていましたか?
  「闇が落ちる前に、もう一度」山本弘は、宇宙論SF。山本弘氏の小説にしては、あまりスタイリッシュな面が少ないような気がしますが、ハードSFに分類してよいと思いました。
 「マルドゥック・スクランブル"-200"」冲方丁は、ミステリー仕立てのSF。マルドゥック・スクランブルファンならずともおすすめの短編です。
 「冬至草」石黒達昌は、硬質な文体の、生物学系ハードSF。個人的には、この本の中で一番のお気に入り。石黒達昌氏については、芥川賞候補になった作品を書いたこともある作家だそうですが、全然知らない作家でした。しかし、「鼻行類」が好きな私にとってこういう文体は大好きです。非常におもしろく読めました。
 「延長コード」津原泰水は、SFという感じがしない作品。実は、あまり理解できませんでした。
 「第二箱船荘の悲劇」北野勇作は、北野勇作氏らしい、簡潔な文章ながらはちゃめちゃな内容の作品。とはいえ、あまり好みの作品ではありませんでした。
 「予め決定されている明日」小林泰三は、仮想世界ものと言ってよいのかもしれませんが、よくわからない作品でした。小林泰三氏と言えば、ホラー小説というイメージがあるのですが。
 「逃げゆく物語の話」牧野修は、物語を物語る、いわゆるメタテキストな小説と言えるのでしょうか。ちょっと違うような気もしますが。ちょっと文学的すぎて、私には難しい小説でした。
 総じて、「ぼくの、マシン」よりも、日本SFらしさが前面に出ている作品群だったように思います。日本SFの短編アンソロジーとしてよくできています。ただ、確かに傑作揃いだと思いますが、いくつか、00年代の代表作とするには首をかしげたくなる作品も含まれているのも確かだと思います。
 なお、巻末の「ゼロ年代日本SF概況」は、非常に参考になる資料でした。一読の価値があると思います。

ゼロ年代日本SFベスト集成(F) 逃げゆく物語の話 大森望編 創元SF文庫

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年2月12日 (土)

ゼロ年代日本SFベスト集成(S) ぼくの、マシン 大森望編 創元SF文庫

Photo_2
 大森望氏編集による、「00年代(西暦2000年~2009年)の10年間に国内で発表されたSF短編から、歴史に残る作品をよりすぐった傑作選」です。この(S)の巻には、「主に宇宙と未来(もしくはテクノロジーと人間と機械)を描いた11編」が収録されています。比較的ハード系の短編が多いと言えますが、やや前衛的な物も含まれています。これが「歴史に残る作品」かと言われるとそうかなという気もしなくはないですが、現時点でベストに近い短編集であることは言えると思います。収録されているのは次の11編。
 「大風呂敷と蜘蛛の糸」野尻抱介。この短編集の中で一番気に入った作品。超巨大な凧で宇宙の一歩手前まで行ってみる女子大生の話。私も地上スタッフでも良いので、学生時代にこんなプロジェクトに関わってみたかった。
 「幸せになる箱庭」小川一水も良かった。ちょっと考えさせられました。
 「鉄仮面をめぐる論議」上遠野浩平は、いまいち乗れませんでした。
 「嘔吐した宇宙飛行士」田中啓文には笑わされました。まさしく田中節。
 「五人姉妹」管浩江も興味深く読めました。女性作家らしい、しっとりした一編。
  「魚船・獣船」上田早夕里は、おもしろいのでしょうが、いまいちピンと来ませんでした。
 「A」桜庭一樹は、バーチャル・アイドル物でしたが、一ひねりあって、切り口がなかなか興味深かったです。
 「ラギッド・ガール」飛浩隆では、斬新なビジョンが展開されているように思いました。「象られた力」と似た雰囲気です。
 「Yedo」円城塔。相変わらず、よくわからない作品が多いです、円城塔氏は。しかし、氏の作品にしては比較的読みやすかったように思います。
 「A.T.D. Automatic Death■EPISODE:0」伊藤計劃+新間大悟は、00年代SFとしてはおもしろいのでしょうが、ちょっと中途半端な気がしました。舞台が共通しているという、「虐殺器官」の方がずっと興味深くておもしろかったです。
 「ぼくの、マシン」神林長平については、<雪風>シリーズを読んだことがない私にとって、いまいち入り込めませんでした。
  総じて、2000年~2009年の日本SFを概観するには良い短編集だと思いました。ただし、これが本当にベストと言えるかというと、それは人それぞれだろうなと言う気がしました。

ゼロ年代日本SFベスト集成(S) ぼくの、マシン 大森望編 創元SF文庫

| | コメント (0) | トラックバック (0)

赤とんぼ (洋食 原木中山)

Photo
オムハンバーグ(1450円)です。
 結局原木中山駅から歩きましたが、どの駅からもかなり離れています。しかもあまり目立たないたたずまいですので、うっかりすると見逃してしまうような店です。
 店自体もかなり小さく、席はカウンターのみ6席しかありません。そんな店で、ベテランのご夫婦が切り盛りしています。メニューには20種類くらいの料理が並んでしますが、おすすめはカレーライスとオムレツ・ハンバーグのようです。今回は、店の主人おすすめのオムハンバーグを注文しました。
 出てきた料理はボリュームとしては女性向きですが、ハンバーグは肉がしっかりと感じられ、卵もふわふわ、中のチキンライスもおいしく、さすがおすすめの料理だと思いました。
 お客さんは、私以外は常連さんらしく、店の主人(奥さん)と気さくに話がはずんでいました。店内も明るく、ランチ時の雰囲気はばっちりです。
 食後にコーヒーが出ましたが、このコーヒーが水出しコーヒーを温めたものだそうで、店自慢の一品とのこと。これが、香りが高いのに、酸味の全くない不思議なコーヒーで、これも話の種におすすめと言えると思います。
 洋食の隠れた名店と言える貴重なお店だと思いました。もっと大きな店を構えても繁盛すると思うのですが、店側に欲がないのでしょうかねぇ。
 駐車場は皆無で、店内は完全禁煙、お子様はお断りの店ですので、ご注意ください。

 赤とんぼ 千葉県船橋市本中山5-9-23

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2011年2月11日 (金)

文庫 ワイオミング生まれの宇宙飛行士

Photo

 中村融編による英米の宇宙開発SFを集めた短編集です。SFマガジン創刊50周年記念アンソロジーだけあって、全編紛れもなくSFしています。アーサー・C・クラークとスティーブン・バクスター以外は聞いたことがない作家ばかりですが、非常に粒ぞろいで、充実した短編集であると思います。テーマの関係上仕方のないところかもしれませんが、もう少しトーンが明るい作品が多いとなおよかったと思います。
 「主任研究者」アンディ・ダンカン
  ソ連の実在のロケット工学者セルゲイ・コロリョフを主人公にした、半分ノンフィクションかと思われる作品。スタージョン記念賞受賞作。ソ連時代の硬直した政治体制下で苦労する主人公たちが描かれています。雰囲気は重苦しいのですが、良くできた短編だと思いました。
 「サターン時代」ウィリアム・バートン
 アポロ計画が中止にならなかったら、と言うテーマでの改変歴史物のSF短編です。登場人物のかなりの部分が実在する人物ですが、私自身がアメリカ人でないためか、いまいちピンとこない部分がありました。ウォルター・クロンカイトっていわれても、名前しか知らないからねぇ。しかし、読みやすい短編だと思いました。
 「電送連続体」アーサー・C・クラーク&スティーブン・バクスター
  物質を電送できる技術が発見された世界を舞台に、イギリスが主導権を握った宇宙開発を描いた改変歴史もののSF短編です。どちらかというと、クラーク色が濃いと思われます。この短編集の中でも特にお気に入りのひとつです。
 「月をぼくのポケットに」ジェイムズ・ラヴグローヴ
 この一編のみ、どちらかというと、宇宙開発を見守る一般人が主人公となっているお話です。主人公はずいぶんひどい目に遭いますが、そのことが主人公の後々の人生に大きな影響を及ぼします。いいお話です。
 「月その六」スティーブン・バクスター
 実に暗いトーンの平行宇宙もの。よくできているとは思いますが、あまりおもしろいとは思えませんでした。
  「献身」エリック・チョイ
 火星が舞台の冒険ハードSFと言ってよいと思います。アイザック・アシモフ記念賞受賞作。あの懐かしきヴァイキング1号が重要な役目を果たしています。この短編集の中でお気に入りの一つです。
 「ワイオミング生まれの宇宙飛行士」アダム=トロイ・カストロ&ジェリイ・オルション
 奇妙な容姿で生まれついたアメリカ人少年が夢を実現して宇宙飛行士となり、火星に行くお話。さすが表題作だけあって、なかなか感動的な一編。中編と言ってもよいほど話が長いのですが、その長さを感じさせないパワーがあります。この短編集の中でもおすすめの一つです。

「ワイオミング生まれの宇宙飛行士」中村融編 ハヤカワSF文庫 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2010年12月 | トップページ | 2011年3月 »